ユーモアの種類

うぁ!ユーモアって色々あるんだ

Humor Word Cloud

テレビ番組ビッグバンセオリーのユーモアを題材に異文化を学ぶブログを書くと決めたのはいいのですが(注1)、私自身、ユーモアについてほとんど知識がないことに気がつきました(汗)

この知識のなさでは、ビッグバンセオリーの笑いが、文化的要素と関係しているかどうか理論付けて説明ができないので、まずこのギャップを埋めることにしました。

早速、手当たり次第ユーモアについて調査してみました。すると、びっくり!!書籍、論文、ブログの記事、YouTube、TEDなどの資料が山ほど出てきました。そして、なんと、ビッグバンセオリーのユーモアの分析まで見つかりました(賢人は皆同じように考えるものなのですね(笑))

今日は、ビッグバンセオリーのユーモアを分析するために必要な基礎知識と、番組をどのように分析していくかを紹介します。



そもそもユーモアとコメディの違いってなに?

最初に「?」に思ったのが、ユーモアコメディの関係でした。なんか、同じようで、違うようで。。。 そうしたら、やっぱり大きな違いがありました。

ユーモアは、私たちが笑えること全部を意味します。それと比べて、コメディは、プロが提供する笑いのエンターテインメントになります。ようするに、全てのコメディはユーモアであっても、全てのユーモアはコメディではないということになります(例えば、日常生活で笑えることなどはコメディではありません)。

ビッグバンセオリーは、もちろんコメディで、ジャンルは、シチュエーション・コメディになります(シットコムとも言います)。シットコムは一般的に、連続性を持ちながら、毎回ストーリーが完結し、主人公たちがほぼ一定している番組を指します(注2

Humor vs Comedy



なぜユーモアは笑えちゃうの?

米ニューヨーカーマガジンの一コマ漫画編集長のボブ・マンコフ氏は、TED Talksのプレゼンでユーモアに関して次のように述べています(テルミのざっくり翻訳):

「この世に先天的に面白いものはない。面白さは、その文脈と我々の期待の枠の中で発生する。」 引用1:TED Talk - Bob Mankoff: Anatomy of a New Yorker Cartoon


[以前のブログ][]で書きましたが、笑いは、自分が期待している結果と全く違うオチがあるときに、そのギャップのストレスを解消するために出てくるといわれています([注3][])。ボフ・マンコフ氏は、このギャプを次の図で説明しています:

Humor vs Comedy

もしも、私たちの期待とオチのギャップが「良性」にあれば、これは普通すぎて面白く無いと感じられます。ギャプが「違反」にあれば、TPOも含めてふさわしくなく、笑えないと感じられます。ギャップが「良性な違反」、いわゆる許せる範囲のルール違反にあるとき、私たちは笑ってしまうのです

そして、これらの要素は(文脈の解釈、期待のもち方、何を良性、違反、良性な違反とするか)、その人の文化や経験に左右されます。



ビッグバンセオリーのユーモアの見どころ①:ユーモアの3大理論 ###

ユーモアには次の3大理論が存在します(注3)。 ビッグバンセオリーのユーモア分析では、この3大理論と文化の要素が重なるところを分析します:

  • 矛盾(Incongruity): 
    期待していたストーリーと、実際のオチが矛盾して、びっくりして笑いが出ること(上記の「良性な違反」であれば)。コメディでは、2つのスクリプト(注4)を重ね合わせ、お互い正反対にすることで矛盾を作り上げる。

    例:「フランス陸軍のナイフ」は、2つの異なるスクリプト(①フランス人はワインを飲むのが好きなので軍人はコルクスクールが必要、②スイスナイフは様々なツールが一つの本体についているので軍人が好むナイフだ)を、ガチャ!とくっつけたもの。矛盾のユーモアがわかりますか?

French Army Knife

引用2:「フランス陸軍のナイフ」 New Yorker Magazine - Michael Crawford, September 10, 2001


  • 優越(Superiority)
    他の人間のミスや劣等感を見て自分に優越感を持つことで笑いが出ること。自分のミスを、第三者的に見たときも同じ現象になる。

例:「劣等感に浸るピエロ」は、「俺を笑って、面白いか。。。」とブツブツいいながら鉄砲を買いに来ている(この例は、①ピエロは面白い、と、②このピエロは怖い、の2つの矛盾するスクリプトも存在するので、矛盾の理論も混じっています)。優越のユーモアがわかりますか?

Clown Joke

引用3:「劣等感に浸るピエロ」 Far Side - Gary Larson


  • 解放(Release)
    恐れや屈託などから解放され精神的なストレスが発散されて笑いが出ること。

例:「副作用より元の病状を!」は、「入院すると薬の副作用で死んじゃうかも!」という恐れを、我々の代わりに看護師に言ってくれることで、読者のストレスを発散させています。解放のユーモアがわかりますか?

Big Pharma Joke

引用4:「副作用より元の病状を!」 Medical Cartoons - Sidney Harris



ビッグバンセオリーのユーモアの見どころ②:あべこべなロジック ###

ユーモアの中に、ロジックがあべこべで笑っちゃう場合があります(注5)。 ビッグバンセオリーのユーモア分析では、このあべこべなロジックと文化の要素が重なるところを分析します:

例:「ペンギンは古いテレビ番組?」は、ロジックの三段論法を誤って使っています。ロジックのユーモアがわかりますか?

Logical Fallacies

引用5:「ペンギンは古いテレビ番組?」 Glasbergen Cartoon - Randy Glasbergen



ビッグバンセオリーのユーモアの見どころ③:ずれたコミュニケーション ###

ユーモアの中に、普通の人が想定する会話とはちょっとずれた会話で笑っちゃう場合があります。 ビッグバンセオリーのユーモア分析では、このずれた会話と文化の要素が重なるところを分析します(注6):

例:「だから、掛け声を使うんだ」 は、「一、二〜の、三!」で患者を持ち上げるのを、うまく伝わらず患者がテーブルから落っこちちゃってますが、一番大切な頭を落とした医師が、その他のスタッフの責任にするかのように指を指しています。ずれたコミュニケーションのユーモアがわかりますか?

Cooperative Principle

引用6:「だから、掛け声を使うんだ」 Dolighan Cartoon - Tim Dolighan



これで、ビッグバンセオリーのユーモアを分析する準備ができました!
次は、分析を実行するのみ!!

マハロ!

テルミ

Vulcan Salute

引用7:"Live Long and Prosper" by newwavecrashing.com



注釈

[注1]: ユーモア、文化、とビッグバンセオリーの最初のブログ記事です ([Blog-Article-Humor-Culture-And-The-Big-Bang-Theory][]) [注2]: その他のコメディのジャンルはこちらです([Wikipedia-Comedy-Genre][])

注2関連リンク:ニューヨーカー雑誌コミッック編集長のBob Mancoff氏が語るユーモアとコメディの違いのブログ記事はこちらです(Difference-Between-Humor-And-Comedy-Bob-Mancoff

[注3]: Scott Weems氏によると、人間の脳が複雑になればなるほど、多くの異なる概念を同時にあつかうようになった。しかし異なる概念を同時に持つとストレスが発生するので、このストレスを解消するためにユーモアが存在する。Weems氏いわく「コンピュータは異なる概念を同時に扱おうとすると壊れてしまう。ユーモアがある人間は壊れない。」([HA! on Amazon][]) [注4]: ユーモアの3大理論はこちらのリンクからご覧になれます([Wikipedia-Theories-Of-Humor][]) [注5]: コメディーのスクリプトとは、話している人間の世界観を示し、その人の文化、経験、知識などの持つ情報で制限されます。

注5関連リンク-1:ビッグバンセオリーのスクリプトを言語的に分析している論文はこちらからご覧になれます(Big-Bang-Theory-Humor-Script-Analysis

注5関連リンク-2:ビッグバンセオリーのコミュニケーションを分析している論文はこちらからご覧になれます(Big-Bang-Theory-Humor-Pragmatic-Analysis

[注6]: 誤謬・あべこべなロジックの種類はこちらからご覧できます([Logical-Fallacies-List][]) [注7]: ずれた会話の分析は、グライス氏の協調の原理を参考にします([Grice-Cooperative-Principle][]) [注8]: ブログ内で利用している画像の多くは、有料コンテンツFotolia ([Fotolia][])、無料コンテンツOpenClipart ([OpenClipart][]) とWikimedia Commons ([WikimediaCommons][]) を利用しています。 [引用1]: ニューヨーカーマガジンの一コマ漫画編集長のボブ・マンコフ氏は、次のTED Talksの中でユーモアの仕組みを語っています ([TED-Talks-Bob-Macoff-on-Humor][]) [引用2]: ニューヨーカーマガジンの一コマ漫画。矛盾理論の例 ([French-Army-Knife][]) [引用3]: ピエロのジョーク。優越理論の例。 Far Side -[Gary Larson][] [引用4]: 製薬会社のジョーク。解放理論の例。Medical Cartoons - [Sidney Harris][] [引用5]: あべこべロジックの例。 Glasbergen Cartoon - [Randy Glasbergen][] [引用6]: コミュニケーションの大切さ。 Dolighan Cartoon - [Tim Dolighan][] [引用7]: Vulcan Salute。 newwavecrashing - [Vulcan Salute][]